残り二日となった夏休み。
三日前には帰ると決めていたはずの望月は、ぎりぎりまで地元に残っていた。
それも凛と一緒にいたいがためである。
だが流石に一日前には帰らなくてはならない。
望月は少し寂しいものを抱えながらも荷造りを終え、哀愁に浸っていた。
そんな望月を能天気にも海に誘った凛。
海につくなり子供みたいにはしゃぎ回っていた。
「うっみー! 海はでかいぞ、うっみー!」
「……元気っすね」
本日の夜に帰らなくてはいけないというのに、海。
望月と凛は地元から一番近い場所にある海へときていた。
ギラギラと照り続ける太陽。
灼熱の日差しを発しながら、コバルトブルーの海を輝かせていた。
海にくるためだけに日焼けサロンに通い、筋トレをしてきた凛は、派手な水着を見につけると、鏡で最終チェックを行っている。
そんな凛の様子に馬鹿馬鹿しくなった望月は、純粋に海を楽しむことにした。
凛と一緒ならばもうなんでも良い。
最後が海であろうと家であろうと関係ない。
もっさりとした盛り髪の毛先を気にしている凛の背中を叩くと、大きく伸びをした。
「いって! なにすんだよ!」
「早く泳ぎますよ?」
「はあ!? なに言ってんの!? 海っつったら日焼けだろ! なんのために焼いたと思ってんだよ!」
「これ以上黒くなってどうすんすか……」
「じゃーん! サンオイル! ほら、塗って」
「……塗りません!」
ぎゃあぎゃあと煩く喧嘩する二人に、周りの人は面白げに視線を向けてくる。
見た目からいえばギャル男とちゃら男である。
どうみてもナンパしにきたようにしか見えないのだろう。
女の子の熱い視線を受けた二人はハッと我を取り戻すと、大人しくなるのであった。
「……見てる?」
「……見てるっすね」
お互い恋人同士であろうとも、根の部分では女好きだ。
望月も男子校に行く前まではほどほどに遊んでいたのである。
決まった相手ができたといえど、女の子に好かれて嫌な気はしない。
久しぶりに味わう感覚に、知らずの内テンションがあがると、凛から奪った鏡で己もチェックを行った。
「……浮気したらぶっ殺すよ?」
「しねえっすよ。つーか凛さんこそ浮気したら知りませんよ? 蓮にちくりますんで」
「ひ、卑怯だぞっ! 蓮ちゃんにちくるのだけは勘弁!」
「その口ぶり……浮気するつもりだったんすか?」
「ちげーよ! 言葉のアヤだろっ!」
「……まあ良いすけど、じゃあどうします?」
凛は望月の言葉に少しばかり唸ると、視線を辺りにさ迷わせた。
海にきたからといって今すぐ海で泳ぐのは憚られる。
サンオイルも望月に没収されたし、海の家で腹ごしらえするのには早い。
今日は恋人同士で海にきたのだ。
ナンパはご法度だし、する気も起こらない。
昔は良く海にくる前に念入りに日焼けサロンで肌を整え、見せても良い身体作りを行い、海に行って肌を綺麗に焼くために準備を整えた。
そうして完成した姿で女の子を引っ掛け、一夏の体験をしたものだ。
その癖でついつい身体作りをしてしまったが、ナンパをするつもりではない。
ギャル男としてのマナーなのだ。
窺うように望月に視線を向ければ、困ったような、でもどことなく嬉しそうな笑みを向けてくれた。
可愛い。
そう思ったのも一瞬、高い声に意識を持っていかれ、凛は後ろを振り向いた。
「あの〜もし良かったら〜私たちと遊びませんか〜?」
所謂逆ナンというやつだ。
目の周りが真っ黒な黒肌ギャルと、ごりごりに髪を巻いたキャバ系ギャルがそこには立っていた。
どうやらキャバ系ギャルは望月に気があるらしく、ちらちらと視線を向けている。
それにイラッときた凛は営業用の笑顔を貼り付けると、お世辞を紡いだ。
「わりーけど今日はそんなんじゃねーんだ〜。ごめんね? こんな可愛い子と遊べないのは残念なんだけど〜」
「じゃあアド教えてよー? 今日じゃなくても良いんだしさあ」
「携帯今持ってねーし。おねーさんの教えてくれんなら連絡するよ〜?」
「ほんと〜? でもざーんねん、メモないや〜」
表面上は和気藹々と、水面下では探るような会話。
ちらりと上目遣いで見る視線、凛は見ないふりをした。
そんな攻防がされているとは露にも思わない望月。
女の子と凛を見ながら、ふと昔のことを思い出していた。
和泉や望月が全寮制の高校に入る前までは、良く三人で海にきていた。
日焼けが嫌だと女の子みたいに長袖を着る和泉に、焼く気満々の凛。
そしてなにもせず普通にしていた望月。
和泉を除いて、凛も望月も当然の如くナンパを良くされた。
昔は遊んでいた故にデレデレとしていたような気もするが、必ずといって和泉が邪魔をするのだ。
普段出さないようなぶりっ子の声を出し、腕に絡み付かせる腕。
中学のときは本当に女の子みたいだった和泉がそんな行動をとれば、女の子は渋々と引き下がるのだ。
そうやって和泉によりナンパ避けをさせられてきたが、今は二人である。
格好良い二人がツレも連れずにいれば、当然の如くナンパをされるのだ。
未だ目先には女の子にデレデレしている凛。
無性に腹が立つと、こちらをずっと見つめる熱視線に応えてみることにした。
「なに? 俺の顔になんかついてる?」
「え? あ、……ううん、格好良いなって思ってた」
見た目に反して意外と大人しいようだ。
キャバ系ギャルは頬を染めながら、視線を落とした。
一年前の夏ならば確実にいっていただろうチャンス。
だが今はいくことすら選択肢にない。
適当に会話をしながら凛に当てつけるように行動すれば、単純な凛は引っかかった。
「ちょ、柚斗、なにしてんだよ」
「……なんすか、もう終わったの」
「終わったつーか、駄目だろ。俺が折角上手くあしらってんのにややこしいことすんなし」
「楽しんでいるように見えたんで、俺も楽しもうかなって」
「……あーそう、ちょっとお前黙っとけ」
不穏な空気を醸し出しながらひそひそと喋る二人に気付いたのか、キャバ系ギャルが引こうと黒肌ギャルの肩を持つ。
だがどうやら黒肌ギャルは引く気がないらしい。
凛にすっと近寄ると、どうにかなろうと必死になっていた。
しかし二人にとって、今やこのギャル二人は眼中にすらない。
絡まれた腕を凛が振り払うと、その腕で望月の腕を掴み、話しかけることすらせずにずんずんと歩き出した。
人気が多い浜辺をすっと奥にいったところにある場所。
岩場や磯がある波打ち際に、凛は連れ出した。
遠くの方では楽しそうに泳ぐ人たちの群れで溢れかえっているが、足場が不安定なこの場所は人気がない。
といっても知る人ぞ知る場所でもあるので、危険性はないのだが。
拓けた場所までくると手を離し、くるりと望月の方に振り返った。
「だからさ〜あれは違うだろ?」
「……は?」
「適当にあしらっちゃうのは簡単だけどさ〜可哀想じゃん? だからなあなあにするつもりだったんだって」
「……あ、そういうことっすか」
「折角海にきてんだから喧嘩したくないし、……つーか! 俺に気のある方は一夏の思い出程度に考えてるっぽかったけど、お前に気ぃある方はどう考えても本気っぽかったじゃん。ああいうの無理」
「はあ……」
「わかってねーだろ? つーか俺だってめっちゃ鍛えたのになにその身体! むかつく!」
「……理不尽な言いがかりやめてくんないっすかね。つーか、俺テニスしてるんで」
「ま〜そうだけど〜……良い身体してんね、ほんと」
凛の紡ぐ言葉に怒りが逸れていった望月は、穏やかな心境になると馬鹿らしくなった。
先ほどまでなにをあんなに苛ついていたのだろうか。
馬鹿馬鹿しいではないか。
羨ましげに望月の身体をじろじろと見る凛に、呆れの溜め息が出た。
「とりあえず、泳ぎません? ナンパされたら交わしてくれるんでしょ」
「ああ、うん。そうだな〜まー……うん」
「なんすか」
「……俺だって結構妬くってわかってんの?」
「……まあ、わかってますよ」
「柚斗も妬いたりすんの」
「……聞かなくてもわかるでしょーが。そういうとこ蓮に似て鈍いんすね」
はにかむような、照れが混じった望月の笑顔。
普段は大人っぽい顔立ちをしているのに、笑えばそれが崩れて子供のようだ。
今まで見せたことのない表情。
望月が隠し持っているものを一つ、垣間見たような気がして凛はむらっときた。
ただでさえずっと我慢していたのだ。
今日のこの日まで。
吉原が和泉に手を出すのを我慢したように、凛も真似て我慢してみた。
告白した日に多少手は出してしまったが、結合までは耐えてみせようと誓っていたのだ。
固く結んで閉じ込めた箱。
それがその笑顔一つで、鍵を開けられてしまった。
もう駄目だった。
第一鍛えられた無駄のない身体を見た時点で凛は限界がきていたのだ。
「……わりー海泳ぐの無理だわ、つーかもう無理だわ。でも俺って結構頑張った方じゃね?」
「……話飛び過ぎて良くわかんないんすけど」
「うん。俺頑張ったつーか頑張った。ご褒美ねーと夏終われねー」
望月と過ごす最後の夏休み。
次、いつ会えるのか定かには決まっていない。
容赦なく降り注ぐ真夏の日差し。
望月の身体をじりじりと焼きながら、輝かせていた。
自分が和泉以上に愛でる存在ができたことに、驚きを感じていた凛。
嗚呼、だがやはり愛でる存在の一番は和泉かもしれない。
大切に箱に仕舞っておきたい和泉と、全てを支配したい望月。
二人の存在に優劣などつけられないが、内から沸きあがる欲情を覚えるのは望月だけだ。
目をきょとりとさせている望月の手を引くと、凛は思い切り砂場にその身体を倒した。
「な、っ!? なにするんすか!?」
訳がわからずに、倒れたまま凛を見上げる望月。
多少日陰になっている場所故に砂浜の温度は肌に優しいが、我慢できる程度には熱い。
凛は肩からさげていた二人分の荷物を入れている鞄を近くに放り投げると、望月の身体に跨った。
「わりー欲情したわ。観念してヤられてよ」
「……はあ!? えっ、ここ海っ! つーか俺が下!?」
「まあそれはいい加減諦めた方が良いんじゃね? ま、初体験がこんなとこでわりーけどさ、俺だって我慢した方つーかさ、まあとにかく愛はあるからヤられて」
「む、無理っす!」
慌てて起き上がろうと試みた望月だったが、凛に腕を踏まれ立ち上がることができなかった。
そのまま足を曲げ、屈む凛。
足による拘束は解けたが、凛の身体の所為で動くことすらままならない。
頬を掴まれ顔を上げさせられれば、噛み付くように口付けられた。
「ふ、ん……!」
冗談ではない。
一万歩譲ってネコでも構わないが、初体験が海の砂浜というのはいただけない。
和泉みたいにロマンチックなことは望まないが、これはありえないだろう。
じたばたと暴れてみるも、テコの原理を用いれば望月が抵抗するには不利だ。
上から押さえられたままの口付けに、次第に力を失っていくのだった。
「う、んん……っ」
ベロリと顎を舐められ、指先は胸元を這う。
男にしては綺麗過ぎる指が肌を擽り、すっと滑っていく。
ふくりと膨らんだ胸の突起を捉えられたかと思えば、凛はそこを強く抓った。
「っ、い……た!」
「痛いくらいが良いんじゃん?」
「は、ぁ、あ……っう、んん……!」
しゃがんでいた凛は体勢を整えると、望月に覆い被さるようになる。
抵抗できないように片手で望月の両手をまとめあげ、空いた方の手は突起を弄る。
ぐりぐりと立ち上がった突起を潰すように指先で転がせば、望月の身体は面白いように跳ねた。
痛みなのか、快感なのか、それすらわからないという表情。
悔しそうに唇を噛み、得体のしれぬものに耐える表情は扇情的だ。
ぞくぞくと凛の背筋を駆け上がる支配欲。
この男を屈服させることができるのは自分だけなのだ、そう思うと歓喜で胸が震えた。
「柚斗、きもちー?」
「いあっ! っ、は……!」
ぎりりと突起に爪を立て、唇を噛んでやれば滲む血の味。
涙目になった望月の顔を覗き込めば、少し頬が赤くなる。
これはこれで良いのかもしれない。
強く弄り過ぎた所為で赤くなってきている突起を緩く撫ぜ、凛は口元に弧を描いた。
「声、抑えれる? 誰かきたら困るだろ」
「っ、ならこんなとこでやめてくださいよ!」
「あー? それは無理。ま〜俺はバレても良いんだけど〜? 関係ないし〜?」
「はあ? 当事者でしょーが」
「ネコちゃんのがきついでしょー。まあ他人に見せながらってのも興奮するよね〜」
「ど変態っすね、ほんと……」
「はは! ふっつ〜だろっ!」
ちゅ、と凛にしては可愛らしいキスをする。
そうして望月から身体を離すと、立ち上がった。
その行動に首を傾げた望月だったが、直ぐに理解することができた。
「流石にここじゃやばいからさ〜ま、陰行く?」
「……やるんすね」
ここまできて抵抗すれば、後からどうなるか考えたくもない。
凛の性癖は同人誌を通じて把握している望月だ。
ここで抵抗するのが得策だと思えず、渋々と凛の後をついていった。
連れられてきた場所は先ほどの場所から数メートルだけ離れた場所だ。
岩場に囲まれるようにして存在しているそこは、中に入り込まなければ人の目につくこともない。
柔らかで温い砂場の上。
さくりと足で温度を確かめていれば、またもや凛に押し倒されたのであった。
「じゃ、脱いで? あ、ちゃんと全裸になってね〜じゃないとどうなるかわかってるよな?」
「……はあ」
逆らえるはずもない。
望月はかなりの抵抗が内々で湧き上がっていたが、それを無理に押さえ込めると海パンに手をかけた。
座っている望月が海パンを脱ぐ様を、立ったまま傍観する凛。
一糸纏わぬ姿になった姿を視姦すると、舌なめずりをした。
「やっぱい〜身体してんね」
凛は望月の後ろに腰をおろすと、下肢を隠そうと体育座りをしている望月を引き寄せた。
お互い同じような体格故に腕にすっぽりとは収まらないが、程よくフィットする形にはなる。
望月の肩に顎を乗せ、体育座りをしている体勢を壊そうと膝裏に手を入れた。
「ちょ……」
そのまま左右に大きく開き、自分の膝に望月の足を引っ掛けるような体勢にすれば、望月の下肢は太陽の下、堂々と晒されたのである。
「や、やめてくださいよっ! こんな格好!」
「なんで? 良く見えるじゃん」
「それが嫌だって言ってるんでしょーが!」
萎えかかっている望月自身。
凛は舐めるようにそこに視線を送ると、脇下から伸ばした手で内太ももを撫ぜた。
ぴくり、と震える望月。
凛の熱い視線に気付いているものの、この体勢じゃ隠すこともできない。
ゆるゆると太ももだけを撫ぜる掌。
視線も相俟ってか、望月のそこは触れられてすらいないのに天を向き始め、先端はじゅわりと滲み始めたのだ。
「は……っぁ、ん」
駄目だ。
焦らされた所為で頭が可笑しくなりそうだ。
胸の突起すら触れようとはせず、脇腹や太もも、腹部しか凛の掌は撫ぜない。
たまに耳たぶを噛まれる以外、望月は快感という確かなものを得られないのだ。
だがどうだろうか。
それだけのはずなのに、望月自身は限界にまで勃ちあがっている。
ふるふると悲しげに泣くように、先端から滲み出た先走り液が自身を伝い、袋を塗らしていく。
「り、んさ……むりっ……」
「なに? 触ってほしーの?」
「っ、……はい」
「しゃーねーな〜」
凛の指先が辿るように自身に伸ばされていく。
つつつと撫ぜるように移動し、自身の周りに生える茂みのところで止まる。
望月に見せ付けるように指先を開くと、ぎゅっと握りこむように自身を掴んだ。
「う、あ……っ!」
びくん、と跳ねる身体。
待ち望んだ快楽は強すぎて、望月は大袈裟な反応で出迎えてしまう。
そのまま上下に動かしてくれるかと思いきや、凛はあっさりと掴んでいた手を離した。
「柚斗〜寝転んで足開いて?」
「……は、はあ!?」
「ほらちゃっちゃとする!」
膝に引っ掛けた望月の足を下ろし、狼狽している身体をどんと押した。
砂場に寝転がるようにして凛を見つめる望月に、笑ってやれば、ぐ、と唇を噛む表情を向けられる。
「ほら〜、早く」
限界にまで赤く染まった頬。
望月がこんな表情をするのだと和泉が知れば大喜びするかもしれない。
凛はそんなことを思いながら鞄からサンオイルを取り出すと、蓋を開けた。
「自分で膝裏持って? んで大きく開いてよ」
「そ、んなの」
「アナル慣らさないと痛いじゃん〜? 俺はそのまま突っ込んでも良いけど〜?」
「……や、やっぱ俺が下なんすか?」
「今日はね〜次は俺が下になったげるからさ?」
「……ほ、ほんとですよ?」
嗚呼、可愛い。
望月は騙されやすいのかもしれない。
死んでもネコになるつもりなど更々ない凛は思ってもない空言を平気で吐くと、望月の足を自主的に開かせた。
そそり立った自身から、その下にある袋、秘部まで全てが丸見えである。
羞恥故に赤く染まる身体。
ローションの代わりに秘部にサンオイルを垂らすと、どろどろに濡れさせてやった。
「今から慣らすからちゃんと持っとけよ?」
サンオイルでてらてらになっている秘部に指を一本挿入すると、望月が慣れるのを待つことなく出し入れをさせた。
オイル故に滑りは良い。
だが異物を受け入れるのは初めてであろうそこは指一本すらきつい状態だ。
慣れない感覚に顔を歪め、不快感を露にしている望月。
膝を持つ手もぷるぷるとしている。
「……ん〜……あ、そっか」
「なっあ、あ……っう! んん!」
秘部に挿入している指は抜かずに、空いている手で自身を握りこんだ。
力が抜けるようにと強く上下に擦り上げ、中を早急に慣らしていく。
熱い内壁も次第に凛の指に慣れ、絡みつくように蠢き始めた。
誘い込むようにひくひくと収縮を繰り返し、凛の指を離さないと言わんばかりに締め付ける。
お望み通りに指を一本増やしてやれば、望月はかふりと息を詰まらせた。
「柚斗の前立腺見つかんないね〜」
「う、ぁ、あ……っあ!」
「でも気持ちいー? いーよね、柚斗のチンコもうビンビンじゃん〜」
探るように内壁に指を這わせ、良い場所を探し出す。
望月の表情を見逃さないようにしながら、熱く絡みつく肉に捕らわれないよう膨らみを見つけるために指を動かした。
ぬちぬちと音をならし、出し入れされる指。
望月はなにがどうなっているのか考える余裕すらなく、ただ与えられる刺激を感じるだけだ。
「っあぁ……! なっ、な、そこ……む、り!」
そんな折、凛の指が望月の前立腺を探し当てた。
ふくりと少しの膨らみを持つそこを強く押し上げれば、望月はだらしなく口を開けたまま大きく喘ぐ。
だらりと零れた涎。
びくびく跳ねた身体。
指を食い殺さんばかりに締め付ける秘部。
「いーとこみっけ!」
ここぞとばかりに指を三本に増やすと、激しく出し入れさせた。
指を押し上げる度にがくがくと震える足。
もう自分で持っているのが限界なのか、望月の手は力を入れ過ぎた所為で真っ白になっている。
凛は引き際を見極めると指を抜き、望月の手を促して開放するよう言ってやった。
「柚斗、挿れるから」
はあはあと肩で息をする望月。
強い快感故なのか涙が幾重にも渡って頬に筋を描いていた。
それをペロリと舐め上げ、優しげなキスを送ると、凛は望月の膝裏を掴み取り出した自身を秘部に宛てつけた。
「あー感激。俺良く我慢できたよな〜」
ただ入ってくるのを待つだけの望月は力を抜こうと、深呼吸を繰り返した。
ぐりぐりと秘部に自身を宛てながら挿入する機会を窺っていた凛。
望月が目を瞑ったのが合図になり、中へと一気に突き入れた。
流石に慣らしたといえど大きさは比べ物にならない。
強烈な圧迫感をもたらしてくれたそこは凛自身を絞め殺そうと、ぎゅうぎゅう締め付けた。
「きっつ〜さっすが処女」
「しょ、じょじゃねー……だろっ」
「脱バックバージンじゃん? おめでと〜!」
なにを言っているのだ。
もう言い返す気にもなれない。
はっはっと息を吐きながら、衝撃に慣れようと努力する望月を無視して、凛は腰を上げると望月の足を大きく前に倒した。
望月の顔の横に自分の膝がある体勢だ。
身体が硬いという訳ではないが、これはきつすぎる。
抗議をしようと口を開いた望月だったが、凛が腰を動かしてしまえば、もうどうすることもできなかった。
「あっあ、うっ、んん……! は、っあ!」
見せ付けるようにゆっくりと出し入れをする凛。
薄らと目を開けば、己の自身も凛に犯されている様もはっきりと見える。
慣れない刺激に砂を掴むも、望月の指の間を擦り抜けて更々と零れ落ちるのだった。
「りん、さ……っ! く、るし……!」
「イイの間違いじゃね?」
「んん! っは、ああ……!」
ごりごりと前立腺を擦りあげれば、望月はぎゅうぎゅうと凛自身を締め付ける。
その締め付けに、凛は早くも限界を感じていた。
早すぎると自分でも思うが、一応は好きな人と初めて結ばれたのである。
場所や状況、プレイなど関係なしに嬉しいものだ。
凛はぶるりと身体を震わせると、先に望月を限界に導いてやるために前立腺ばかりを押し上げた。
腰を素早く動かし、己も絶頂へと高めていく。
「ぁ、あ! ああ! い、く! りん、っさ……ぁ!」
「ン、俺も……っ」
凛の汗がぽとりと落ち、望月の頬にかかった。
それがなにかの合図になったのか、パンパンと肌のぶつかり合う音が断続的に響く。
凛は唇を噛み締め、腰の動きを変えると中にぶちまけるように爆ぜた。
その後直ぐに望月も限界にまで勃ちあがった自身を爆ぜさせると、白濁を飛ばしたのである。
「う、あ……!」
望月の飛ばした白濁が、自分の顔にかかる。
体勢故に仕方ないが、セルフ顔射みたいで頂けない。
なんだか大切なものを失ったような気がして、望月は悲しくなった。
「……あれ? 柚斗なに哀愁漂わせてんの?」
「は……?」
「一回で終わりじゃねーし?」
爽やかな笑顔。
ギャル男の癖に歯だけは白い凛。
にっこりと微笑むと、痛む腰を引き摺り逃げようとする望月をがっしりと掴んだ。
「これは準備体操、今から本番。OK?」
「……の、NOって言えば、……」
「ハハ、却下〜」
きらきらと輝くような笑み。
望月は抵抗も弁解もさせてもらえずに、凛に再度襲われるのだった。
気がつけば夕日が海を照らしていた。
望月は海に浮かぶ赤い揺れを見ながら、はあと深い溜め息を吐いた。
海に遊びにきたはずなのに凛に襲われてしまい、ゆっくりと考えるようになれた今は夕方。
身体も腰も脳内も全てがどろどろになってしまった。
「今日帰るんだよな〜」
望月をそんな風にした本人は暢気に夕日を見つめながら、望月に背を向けている。
怒ろうと最初は思っていたものの、いざ終わってしまうともう怒る気にすらなれない。
これも愛の一種なのだろうか。
さっきの凛の行動も、愛の一種だと思い諦めることにしよう。
「……帰りますよ、そりゃ」
「次いつ会えんだろーな」
「……わかりませんけど、なるべく帰ってくるようには善処します」
「ほんと? じゃー次はさっ、夜の公園でヤろ〜?」
「あんたって人はほんとどうしようもないですね! ちょっとでも寂しいと思った俺が馬鹿でした!」
「あはは。怒るなって! な?」
わしゃわしゃと望月の髪の毛を撫ぜてくる凛。
振り払おうにも力が出ずに、髪の毛はぐしゃぐしゃにされてしまう。
凛のしなやかな腕が伸びて、望月を捕らえた。
そのまま囲うように抱きしめられてしまい、慣れぬ行動に望月の胸がどくりと鳴る。
「寂しいなー」
その一言に、望月は全てを理解した。
なんだかんだ言いつつ凛も寂しいと思っていてくれているようだ。
そう思うと少し嬉しくなる。
沸々と湧き上がろうとしていた怒りも、ぱちりと弾けて消えてしまった。
「……もう少しこうして、……いたいっす」
凛に包まれた腕の中、望月はそう紡ぐと、甘えるように凛の肩に額を置いた。
ぎゅ、と回る腕。
返すように回す腕。
不思議と暑さだけは感じない。
ザザンと揺れる波の音。
暮れる夕日に、落ちる太陽。
望月と凛は残された時間を最後まで惜しむように、言葉を紡がずに黙ってお互いを感じていた。
夏が過ぎれば秋がくる。
そうして季節は移り変わる。
だが夏に変化した関係は、秋がきても変わることはない。
望月は一つ大人になったような気がして、愛しい人の腕の中、そんなことを思うのであった。