「蓮寝ちゃいましたね〜。寝顔可愛いな〜」
ソファで猫のように丸まって寝ている蓮の寝顔をでれでれとした表情で見つめているのは柚斗であった。
吉原もいない今日久しぶりに三人で過ごそうかと提案したのはブラコンだと定評のある凛だ。煩くお願いをする凛に仕様がない、と半分無理に蓮を自室に誘い、酒盛りが始まったのもそう遅くはなかった。
凛と柚斗が同棲をしてからというものの隣に住んでいる蓮もかなり近くにいるようにはなったのだが、なかなか三人で過ごすということにはならなかったため羽目を外し過ぎたという部分もあるのだろう。
酒盛りをしてから直ぐに蓮はダウンして、泥酔した状態で落ちてしまった。
そこまで酒が強い訳でもない凛も柚斗もそれなりに自我を保てているのに、蓮の弱さには驚かされるばかりだ。柚斗はふにふにと蓮の頬を突くと少し柔らかな表情をみせた。
「成長したなあ」
しみじみと親のようなことを考えていた柚斗の背中にのっそりと圧し掛かるのは柚斗の恋人でもあり、もう一人の子供でもある凛。この兄弟はいつまでたってもてんで子供だ。
よしよしと髪を撫ぜあやしたのだが、凛の目的はもっと別のところにあったのか柚斗を羽交い絞めにすると汗でしっとりとしたティシャツの上から肌を弄った。
「ちょっと、凛さん? 酔ってるんすか? 蓮側にいるんでやめてくださいよ」
「大丈夫! 蓮ちゃん寝汚いから起きないっしょ〜。それに、こんだけ酔っ払ってるんだもーん、ね? 起きない起きない」
「そういう問題じゃ、ないって、ちょっと!」
擽るだけだった手の動きが怪しげなものへと変化してくる。ぞわぞわと背筋をかける悪寒に柚斗は嫌な予感がすると、凛の腕から抜けようともがいた。が、それ以上に強い力で抱き締められてしまいびくとも動かなくなってしまった。
お互い酒に酔っている所為か正確な判断能力が鈍り、抵抗力すら奪われていく。上半身を這いずり回る指に危険を感じているのにも関わらず、柚斗はろくに抵抗らしい抵抗ができないままその手の侵入を許可してしまったのであった。
「っ、……」
凛の指先が悪戯に乳首を引っ掛け、柔らかいそこを揉むようにふにふにと弄くる。最初はくすぐったさが勝っていたものの執拗に弄られれば次第に硬度も増していき、存在を主張するようになってきた。
凛の少し伸びた爪がカリと乳首を引っかくと、大袈裟な反応をした柚斗。それに気を良くしたのか凛は爪先で挟むように引っ張ると強い痛みを齎せた。
「っく、ぁあ……」
「痛い? 柚斗、痛いのに硬くさせてんの?」
「さ、わるっから」
「触ったらおっきくなんの? え〜柚斗やらしい〜。じゃあもっと痛くしたら硬くなるんじゃん」
「っや、め!」
酒なのか刺激されている所為なのかじくじくと疼くそこは熱を持ち始め、触れられていないとどこかむず痒くなってきている。柚斗はそんな状況になっているのに羞恥を覚えもしたし、隣で蓮が寝ているという状況に興奮もした。
こんな現状で淫蕩な気分になっているだなんてとんだ変態だ。凛もしかりだが、親友の隣でセックスなど考えたくもない。
今更ながらに湧き上がってくる後悔のような気持ちに逃げようと試みたものの、凛の歯が柚斗の肩に食い込みまるで逃げ出したら駄目だといわないばかりに強い痛みを招いた。
「く、ン……っ」
「だあめ。逃げたらおしおきするよ〜?」
この状況こそがおしおきだ。凛は歯型が残るまで強くそこに噛みつくと、薄っすらと付いた後に満足気に笑った。
ざらりとした舌が優しく這い、痛みでじんじんとする箇所に柔らかな悦楽。柚斗はぶるりと身体を震わせると、掠れた喘ぎを漏らした。
「熱いね、柚斗。汗かいてる」
つつ、と汗が伝う柚斗の首筋に凛は舌を乗せると垂れてくる汗を拭うようにして舐め取る。しょっぱいと耳元で囁かれればカッと照った頬に羞恥が上回って、柚斗は慌てて汗を拭った。
「な、舐めないでくださいよ!」
「大きな声出して良いの〜? 蓮ちゃん、起きちゃうよ〜」
口元を手で覆い、おそるおそる蓮の方を向いてみるが蓮は未だ幸せな夢の中なのか穏やかな寝顔を晒したままだ。
ほっと息を吐く間もなく、凛は柚斗のティシャツをたくし上げるとそのまま無防備な脇腹を撫ぜ、二の腕を掴むとぐいっと持ち上げた。蛍光灯の下晒された柚斗の二の腕から脇腹。テニスをしていても日に焼けることがないのかそこだけ異様に白い。
加虐心にかられた凛は柚斗が嫌がるのを承知で脇に舌を這わせると、ねっとりとした舌使いで丁重に舐め上げた。
「っ、や、ちょっ、凛さっ! やめっやめろ! 嫌だ!」
じたばたともがく柚斗を押さえ付け、脇下から二の腕にかけて何度も舌を往復させれば、柚斗は嫌だと言いながらも身体の熱を上げ愉悦にふるりと身体をひくつかせる。
「ここが一番しょっぱいねえ、柚斗」
ちゅ、と吸い付けばぎりぎりと噛み締められた唇が見える。普段泣き言も言わない柚斗の目尻には不自然な涙が滲んでおり、本気で嫌なのだと実感させられた。
がくがくと震えて、嫌だと叫んで、めいいっぱい力を込めている柚斗。凛は脇から舌を剥がすと、そのまま赤く染まった目尻に吸い付いた。
「叫んで良いの? あ、蓮ちゃんに見せ付けたい? 柚斗がすっごくエッチなの」
「なっ!」
「それでも良いけどねえ〜俺は」
「……っ、ん」
がぶりと耳たぶを食みながら凛はわざと柚斗の嫌がることばかりを言葉にしてみせ、吹き込むように耳元で話す。一つ言葉を紡ぐごとに強く唇を噛み締める柚斗の表情は赤いのだか青いのだかわからないほどの変化だ。
乳首を摘んでいた指を離し、ゆっくり焦らすように爪を立て下降させていけば期待しているのか柚斗の劣情をはらんだ目とかち合った。
割れた腹筋、しなやかな裸体。汗でしっとりとした肌を指の腹で楽しむように触り、下半身へと忍び込ませる。
夏だからかティシャツにパンツだけというラフな格好だった柚斗は凛の手を呆気なくも受け入れると、既に反応させていた性器に到達させてしまった。
「もう勃起してんの? ちょ〜硬いね、すっごくべたべたしてる」
酒で火照った指先より遥かに熱い性器に絡まる指が不規則な動きをみせて上下に揺れる。先端から溢れ出る先走りを塗り付けるように指で輪を作った凛は全体的にしごくと動きを速めた。
びくびくと脈打つ竿が薄い皮膚越しに伝わって、凛はいやらしげな笑みを浮かべると柚斗の顎を擽る。
「抵抗は終わった?」
びくりと反応した背中にぴったりと密着し、顎を擽っていた指を口腔に入れる。乱暴に喉奥まで犯すよう指を出し入れさせれば苦しげに呻く声が漏れた。
「ふっ、ぐ……うう」
僅かにえずいて抗議の声を漏らしているのを無視して強引に犯せば、呑み切れずに零れた唾液が顎を伝って落ちた。わざと柚斗に見えるよう舌を出してそれを口に含めば、それすら嫌なのか柚斗はぎゅっと目を瞑ると頭を左右に振った。
柚斗の少し痛んだ髪が頬に当たってくすぐったさを感じる。凛はそのまま綺麗に唾液を舐め取ると、口腔から指を引き抜き後ろから後孔へと指を忍ばせた。
「ひくひくしてんじゃん〜。最初は嫌がってたのに、もう受け入れる気になった〜? ネコちゃん」
カッと開いた瞳孔。抵抗される前に先走りが溢れる先端に強く爪を立てれば、柚斗の身体が大きく痙攣した。あまりの痛みに血が出るほど唇を噛み締めると、喘ぎすら飲み込む。
側には安らかな寝息を立てて眠る蓮がいて、柚斗は凛の良いように甚振られている。わざと痛みだけを与えるかのような先端の刺激も、耳元で囁かれる卑猥な言葉も、後孔を撫ぜるだけの焦れったい動きも全てが柚斗を狂わせる。
こんなはずではなかった。すっかりネコの立場に慣らされてしまった柚斗は、男なのにという微かに残った矜持が理性を突いて、情けなくも物的なものへと現れてしまった。
「は……ッ、ん、ん……く、そっ」
一度たがが外れたら後は転がるようにして落ちていくだけ。ぼろりと零れた一粒の涙をきっかけに、柚斗は引き攣る喉を飲み込んで泣き声を隠そうとするもぼろぼろ零れる涙だけは隠しようもなく零れたままにしかならなかった。
「あれ〜、泣いちゃったの? 柚斗、可愛いね」
「り、んさ……っも、やめ」
「やめても良いの? ここ、欲しいんでしょ?」
「っ、場所、場所変えて! 蓮が、いる、から」
「大丈夫だって、起きないし〜。それに起きても、蓮ちゃん寝たフリが上手だからあ」
酒に酷く酔っているらしい凛は柚斗の言葉を適当にあしらうだけですることを止める気はなさそうだ。凛が大事にしている蓮の前でこんなことができるのも信じられなかったし、こんな状況で興奮する己も信じられない。
柚斗は熱に浮かされた身体を持て余すこともできず、ゆるゆる溶かされるように思考を塗り替えられていくだけ。
「柚斗も、もっと酔っちゃえば楽んなるっしょ?」
しゅわ、と炭酸の弾ける感覚があらぬところからする。驚いて半身を捩じり確認してみれば、温くなったビールを後孔に注ぐ凛の姿があった。
量的にはたいしたことなどないのだろうが、そういった意図に使うことが俄かには理解しがたい。熱いのかどうなのかわからない液体が直腸に吸収されていくのだけが、遠くなった思考で理解できた。
元から酒に酔っていた状態だったので柚斗の身体はいつもより弛緩しており、なんなく凛の指を飲み込むと刺激を待ち侘びていたかのようにきゅうと締め付ける。
既に解れていたそこは蕩けるような肉壁で凛の指を包み込むと、愉悦を待ち望むかのように凛の指の動きに合わせて蠢いた。
「は、っあ、あ……くっ……」
温度がぐっと上がる。直に注がれたビールが原因か、それとも凛の熱に溺れているだけなのか、柚斗から抵抗の念が綺麗に消え去ると今度は自ら誘うように腰を揺らせる。
身体中全てが性感帯のように過敏になり、凛が吐く息ですら愉悦になりえる。そんな熱気の篭った睦み合いが狭い範囲でのことだなんて信じられないほどだ。
仰け反った背中の所為で露になる喉元。凛は横から噛み付くように喉仏に柔らかく歯を立てると、後孔を犯す指の動きを速めた。
「り、ンさ……っ」
飛沫になった汗が飛び散った。冷静になり切れない部分が必死で押し留めているのにも関わらず、崩壊した理性を止める術などない。柚斗は後孔に入っている指を締め付けた。
「早く、いれろ、よ」
我慢が聞かなかった。蓮がそばにいるということも、いつかタチになるということも忘れていた訳ではない。ただこの苦しみを解放する術が一つしかなかっただけだ。
どろどろに解かされた肉壁は熟れたように熱を持ち、今か今かと大きな刺激を待ち侘びている。それは凛が与えてくれるものでしかないこともわかっていた。
酩酊状態に陥っていた二人は最早楽になることしか頭になく、蓮が身動ぎしたことも見ないふりをして素早く下着を脱いだ。
柚斗の身体を前に倒し四つん這いにさせる。パンツをずり下ろすと怒張した性器を後孔に擦り付け、ぐっと一気に奥まで突くように挿入させた。
「ぁ――ッ!」
叫び声だけはなんとか漏らさなかったものの、柚斗は僅かに痙攣すると白くなるまで床に爪を立てた。
一気に挿入した衝撃でお互い荒く息が乱れる。整えるまで耐えていたがじくじくと緩い刺激に先に耐え切れなくなった凛が痺れを切らすと激しく腰を揺らし始めた。
引き攣ったかのように慣れていない内壁が挿入の動きとともにずれるような感覚。痛みが勝る律動に柚斗は少しでも楽になろうと上体を起こすがそれを凛が許すはずもなく頭部を掴むと床に押し付けるようにした。
「腰高くあげろって、だめ、起き上がったらあ、蓮ちゃん起こすよ?」
びくりと強張った身体、柚斗はそのまま大人しくなった。凛はそれを良いことに柚斗のしっかりとした腰を掴むとわざとゆっくりと抽送をし始めた。
日に焼けていない柚斗の尻から凛の赤黒くなった性器が出入りするさまは倒錯的でエロチシズムに溢れている。白の中に混じる赤に酷く興奮を覚えた凛は、尻の皮膚を左右に引っ張ると入り口が良く見えるようにした。
柚斗の赤く爛れた肉壁が凛の性器に擦られて顔を出す。思わず伸ばした指先でそこを緩く撫ぜてみれば、柚斗から鼻にかかったかのような甘く蕩けた声が漏れた。
「ふ、ン……」
「……柚斗、……やっべ〜、俺、もたねえかもじゃんか〜」
「は、……?」
「ごめんね、柚斗えろいから〜俺のも限界なんだわ」
浅く突いて柚斗を焦らすことを楽しんではいたのだが、そろそろ凛も限界が近い。舌なめずりをすると腰をしっかりと掴み性器を捩じ込むように深く押し入れた。
結合部が奥まで繋がって痺れるような愉悦が身体を走る。凛は蕩けるような肉壁に酔い痴れながら、もがく柚斗の身体を押さえ付けて腰を揺らし始めた。
柚斗の良いところなど知り尽くしている凛は、弱いところばかり重点的に責めると性器には触れずに前立腺の刺激だけで悦を高める。絶えず漏れる喘ぎが麻薬のように凛の脳内で広がって、間接的な刺激に変わった。
「く……ぅ、いっ、あ……」
深く繋がった箇所から漏れる水音だとか、お互いの荒い息だとか、肌と肌がぶつかる音だとか、煩く響くのにも関わらず動きを止めることはもうできない。
凛は柚斗の筋肉で覆われた尻を強く叩きながら粘膜を擦り、更なる刺激を求めた。
「は、っ、あ……あ」
「きもちい……?」
「……っ、く、あ」
言葉で言わない代わりに柚斗は頬を床に擦り付けると、かくかくと首を上下に振った。蕩けたような目元を見せた柚斗が誘うように後孔の締め付けを強くするものだから、凛は堪らなかった。
普段は凛以上に男らしくそして面倒見が良い柚斗が、凛の前だけであられもない姿になる。時間を多く共有している蓮でさえ柚斗の身体の隅々までは知りえないだろう。
口では嫌だ嫌だと言いながらも快楽に順応なさまだとか、時折誘ってくるような仕草をしてみせるだとか、とことん愉悦に弱い柚斗と凛ならではの行動なのだろうけれどもそれでも凛だけに許された行為が凛を酷く高揚させる。
絡み付いてくる粘膜を押し上げるように裂き、奥深く突き立てる。限界が近いのか責め立てる言葉も思いつかないほど凛は腰の動きだけに夢中になると柚斗の性器を握り締めて一緒の解放を待った。
硬く張り詰めた先がごりごりと壁を擦れば凛の手の内でびくびくと震える性器。思わず強く締め付けられて中に白濁を迸らせてしまえば、凛の手の中で熱を上げていた性器も小さく痙攣し床に飛び散るほどの勢いで欲を吐き出した。
「は……ッ、……り、んさ……」
男らしい掠れた声で名前を呼ばれる。萎えていた性器の芯がじんと熱くなって、意図もなく硬度を取り戻す。
「あ〜あ、またおっきくなったんだけどどうしてくれんの」
「元気、っすね……蓮、は?」
「蓮ちゃん? ……寝てるよ」
「そ、……なら、ベッドで、もう一回します? 流石に、も、蓮の前では嫌っす」
「一回で終わるかな〜。じゃ、行こ」
二人は持て余す熱を我慢できるほどできた理性ではない。零れた精液をそのままに、慌てるようにして寝室に入っていくともう一度劣情を解消するために身体を繋げた。
きっと酒に酔い過ぎたのだ。だから普段なら到底受け入れられないことだって、素直に受け入れることができる。柚斗は再び覆い被さってくる凛の身体を抱き止めると、ゆっくりと目を瞑った。